平成20年1月13日、R会グループが北海道新聞に「四谷大塚Net」との業務提携を打ち出した全面広告を出しましたね。また、17日の第2社会面の記事にはHZ会・S英など他の北海道大手塾の生き残り策も掲載されていました。
R会グループは「東進衛星予備校」とのタイアップもかなり前から進めており、小学生対象の「四谷大塚Net」と合わせて、小中高の塾指導部門を縦系列展開することを完成させてきたわけです。
ところで、私は1つ疑問を感じることがあります。前述の大手塾はブランドとして確立(北海道の塾としては)している塾のはずなのに、なぜ首都圏の大手と提携する必要があるのでしょうか。
静岡から進出してきたS英は、確かな教務地盤を築いているためか、他社との提携はしてないようですし、HZ会はHZ会で、北海道の塾の先駆けとしてのプライドがあるのか、自社で教務システムをすべて構築しているようです。
残念ながら、HZ会が一番対応が遅れているように思えますが、30年以上のノウハウのある塾だけに小中高の塾指導部門の縦系列展開は近々達成されるでしょう。
実は、R会が他社提携をしたり、HZ会が中学部門からなかなか外へ出ていかないのは、この30年近くの北海道の教育土壌に大きな問題があったからなのです。もちろん、北海道基盤の大手塾(R会、HZ会の他、道央圏に展開するNSスクールも含めて)の指導にも内包する爆弾が仕込まれていたことも否定できません。
今までの塾、今後の塾の在り方について、お話しできるブログとして今後、書かせていただきます。目障りでなければ、ぜひ一読してみてください。
一口に学習塾といっても、いろいろな種類があります。まず、一般的にどのように分類されるかをWEB百科事典の記述をもとにご紹介しましょう。
●学習塾の分類
A. 学力別
難関校進学系と補習系に分かれるが、大手進学塾では学力に応じてクラス分けしているためその両方を持つ場合が多い。中小の大半の塾では人数の都合上クラス分けをしていない。個別指導塾や自習式の塾は個人の実力に応じて対応できるためその区分がない。
(1)難関校進学系
難関の学校に進学希望する生徒に、学校の授業より難しい内容を加え指導するもの。入塾試験で選抜するところがほとんど。難関校を目指す生徒のみの塾はほとんどなく、ほとんどが特進コースなどのクラスを作り補習系と区別した形を取っている。
中学受験の場合は、日能研、四谷大塚、サピックス(中学受験の御三家塾)、希学園、浜学園、日能研関西(関西の3大中学受験塾)等が有名。
高校受験の場合は関西志学館、サピックス、早稲田アカデミー等が有名。
(2)補習系
学校の授業だけでは完全に理解できない生徒に、先行して授業を行ったり補習を行うもの。学習塾の多くがこの補習系に属する。
B.人数別
(1)集団授業の塾
1クラス概ね10人以上のクラス構成の塾。社員扱いの講師がハイレベルなクラスを担当し、アルバイト講師がそれ以外のほとんどのクラスを担当することが多い。社員とアルバイトの区別が明確でないので、習う側からは講師の質の判断が難しい。社員扱いの講師が多い塾は1クラスの人数が多くなり授業料も高額になる。集団授業塾でも全てアルバイト講師というところも多く、この場合は授業料が比較的安価である事が多い。
大手塾では、規模の拡大に伴い、主に下位クラスで講師の質が落ちているという。
(2)自習形式の塾
クラスはなく広い部屋に異学年の小中学生を集め、様々な科目を自習形式で同時に学習する。解説の書いた専用のプリントと問題用紙をもらい自学自習する。採点者は採点に追われるので、ほとんど指導ができない。人数の多いところでは、アルバイト講師が巡回指導することもある。ほとんどがフランチャイズ形式で、公文式や学研教室がこれに当たる。
(3)個別指導の塾
1人の講師が概ね1名~4名の生徒を指導する。個人指導ができるが、講師はほぼ全員アルバイト。講師1人に対する生徒が少ない分、授業料が高額。時間単価では、集団授業の塾の3~6倍となる。講師のプロ意識は低く、受験指導への知識も少ない。苦手科目のフォローとして補習程度に使うのが無難。
※ここで言う社員とは、塾を専業として働き社会保険(厚生年金・健康保険・雇用保険)に加入した一般的な正社員を言う。アルバイト講師は、主に学生や主婦、他に仕事を持っている者や1年以内の短期契約又は短期契約の雇用期間自動更新などの契約社員を示す。
社員とアルバイトの違いが明確でないため、1~2年で講師が入れ替わる実質アルバイトのような就労実態であっても正社員(常勤講師)などと表現している塾も多い。
大手塾では、社員に登用される可能性があることを示唆しアルバイト講師として働かせ、数年後に塾側がその指導力を評価した一部の講師を社員として登用する場合がある。
経営的な面から指導力のあるアルバイト講師であってもすぐに社員として登用されることは少なく、講師のほとんどがアルバイトで成り立っている。平均的な授業料の塾では教室管理者一人が社員で、その他がアルバイト講師ということになる。元塾生がこれらの講師に大学生アルバイト講師から始め、社員を目指し教室管理者となることも多い。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
と説明されていますが、『ウィキペディア(Wikipedia)』の場合、かなり主観的な部分も多いのでご注意ください。(赤文字部分)
さて、北海道の学習塾は、基本的に補習系塾のことを指します。中学校での内申点アップを目指して公立高校入試を有利にし、全国的にも易しいレベルの公立高校入試問題への対応力を身につけさせることを目的にした塾ばかりが存在しているからです。
R会グループやHZ会などの北海道の塾は、補習塾とみなされる事を嫌うため、『進学塾』あるいは『総合塾』であることを強調した宣伝をしますが、まず中学校の授業ありきですから、『補習系塾』にほかならないわけです。
北海道という地域が、「塾≒補習系塾」となっているのは、高校進学の地域特殊性があるからなのです。
(1)公立高校受験に必要な内申点が中1~3の全学年が対象となること。
具体的に言いますと、北海道公立高校入試では、次のように内申点は算出されています。
○中1の9教科の評定(3学期の通知表のこと)合計(9~45)×2……①
○中2の9教科の評定(3学期の通知表のこと)合計(9~45)×2……②
○中3の9教科の評定(3学期の通知表のこと)合計(9~45)×3……③
※①+②+③=内申点(63~315)
そして、315~296をAランクとし、以下20刻みでMまでのランク付けをしています。このA~Mまでを内申ランクといいます。
若干、中3の比率が高めですが、中1・2での配点も大きく、まあ、学校の授業で手を抜いた生徒は上位校への進学の夢を中3進級時にほぼ断たれてしまう制度といえます。なぜなら、当日の入試点(学力点)と内申点との評価比率が1:1(募集定員の70%の生徒はこの基準)となっているからです。
送り出す中学校の進路指導でも、例えば、札幌南や北のような難関校にC・Dランクの生徒を受験させないように進路をきめるのです。高校の学校別裁量で15%程度は学力点を重視して合格者選抜をしますが、この枠を当てにするのはかなり危険といえます。
ところで関東圏の内申はどうなっているかといいますと、中1~3の全学年を対象とする都県はほぼなく、多くが中2・3の2学年、一部では中3のみが対象となっています。入試での比率も1:1ではなく、当日の学力点を多めにみるようになっているようです。
つまり、中3からの努力で志望校受験を反映できる制度といえます。そのためかどうかは断言できませんが、高校受験において学力検査よりも内申点の扱いが低い茨城県・埼玉県などでは公立高校の大学進学実績がよいということが報告されています。
このことから、北海道の学習塾は「受験は中1からすでに始まっている!」をスローガンに生徒募集をすることが可能になるわけです。多くの親御さんたちもそれに賛同し、われ先と補習塾へと通わせる土壌が北海道にはできたのです。
(2)高校受験のインシャーティブを公立が握ってきたこと。
北海道で高校受験をした親御さんたちに、進学校として思いつく学校を聞くと、札幌圏なら南北東西、旭丘など、空知では岩東、滝川、旭川では旭東、帯広は柏葉、釧路は湖陵、北見は北斗、網走は南ヶ丘、胆振は苫東、室栄などなど。列挙されるのは道立高校ばかりです。私立をあげるのは函館くらいで、つい10年ほど前までは、進学実績が優れると認知された私立はわずかしかなかったのです。
前述の各地域ではそれらの高校の出身者が幅を利かせるこまった地域性があったのにも原因があります。たとえば、旭川市では旭東出身というだけで畏怖されます。帯広や北見、室蘭などもまったくと言っていいほど同じ状況です。
ただし、地方都市ではさらにその上に札南・札北があり、極端に言えば、その個人の人間性よりどの進学校出身かで就職などに有利・不利が決まることもあります。
しかも北海道の公立高校は、入試問題は当たり前ですがすべて共通です。進学校に行くにも、職業専門高に行くにも同じ内容の練度だけが合否を決めることになります。公立高校入試は、文科省制定の学習指導要領を逸脱した内容は出題できません(余談ですが、過去に一部逸脱した際、その設問を受験者すべてに加点する処置をとったこともあります)。
ようするに、中1~3の内容を理解していたら入試はOK。しかも公立高校メインなのですから、塾は補習塾として存在していることが当たり前になるわけです。
このことに加え、中学校で実施される学力テストの得点集計を他校と共同で行えなくなったこともR会やHZ会などの塾に追い風となりました。塾に行かなければ自分の位置はわからない状況が生まれたからです。他校の生徒との比較は塾で実施する集計にたよらねばならなくなったからです。
あくまでも学校主体の指導をしながら塾を利用する土壌、首都圏のような内申をあまり重視せず、私立受験主導なら、北海道の塾は補習塾中心のいびつな発展はありえなかったと私は考えます。
さて、前回の学習塾の問題提起の続きです。北海道の大手塾の対象は90%中学生であることに、お気づきになったと思います。前回書かせていただいた内容に補足しますと、北海道の教育事情に次の問題点があったからです。
(1)大手塾が創業した30~40年前から10年前まで、受験を伴う私立中学(一貫校含む)がほぼなかったため。
→何を意味するかというと、小学生のうちは勉強より他の習い事(ピアノ・書道・スポーツ少年団etc.)をさせる親御さんがほとんどで、勉強は中学になってからでよいという考えが主導でした。当時の私立中学というと「藤女子中高」以外は全くと言っていいほど知名度はなく、女子はともかく男子は中学受験を意識する機会がなかったといってよいでしょう。
したがって、小学生対象の塾は大手塾ではメインにせず、「まあ、やってますよ。」程度の展開しかしてませんでした。この状況は、「北嶺中高」が台頭するまでかなりの長きに続きました。
(2)大手塾の創業前に大学受験予備校が地位を作っていた。
→現在はすべて全国ネットの予備校の系列下になりましたが、大手塾の創業当時、札幌には「札幌予備学院」「桑園予備校」の2校があり、大学受験指導はある程度リーダーシップをとる存在でした。
大学受験はある意味データ勝負ですので、道内にこだわった塾にはノウハウの構築が容易にできるわけがなく、重点を置きませんでした。
それなら、札幌圏以外で展開したらよかったのですが(特に帯広創業のR会!)、地域トップの進学校は旭川以外では、国公立大学+著名私立大学進学者が学年の40%未満という現状では商売として成立しないため、小学生同様、「まあ、やってますよ。」程度の展開しかしてませんでした。いや、地域によっては募集すらしていません。
(1)、(2)のことから、ようするに商売になるのは中学生しかいなかったのです。そのため、大手塾を含めた補習系塾集団は、公立高校合格とそのための内申点アップ指導へと特化することで業界をつくってきたのです。ここに、方向性の大きな問題点が将来的に内包していることに目をつぶって……。
何かというと、1980年代初頭にすでに叫ばれていた少子化問題(当時はチャイルドショックと言ってました)です。生徒数の減少が、企業収益の減少につながる塾業界は、ここで中学生だけではなく小学生や高校生に対しての指導を構築することにどの塾も目を向けませんでした。それが将来の弱体化につながっていくのです。
なお、誤解のないように記述しますが、大手塾以外の個人塾またはそれに近い塾はその限りではありません。「TANJI」のように一貫性のある指導力を構築した正しい塾もありました。経営的には厳しい時代もあったそうですが、丹治塾長が指導システムの構築に全力を注がれ、今では大手塾で対応できない学校の生徒にも受け皿のある総合進学塾へと進化しています。個人的には、北海道に残るのは「TANJI」のような志のある塾だけでもよい!なんて、考えるのは言いすぎでしょうか?
※1月末~2月初旬のこの時期には、各出版社共催の塾テキスト展示会が開催されます。多くのテキストや教材が出品されて、指導する立場の人間としては、良い刺激を得る機会でもあります。
しかし、ちょっと冷静に人間模様を観察すると、出版社の営業マンたちは売り込みに必死な姿をさらけ出しています。面白いのは、個人塾オーナーより、一部大手塾の教科担当者に饗応するケースもあったりするからです。そもそもそこに大手塾関係者がいること自体どんなもんでしょうか?
さて、北海道の大手学習塾が中学生に特化したことにより、現在まで経営が続いてきたことはご理解していただけたことと思います。特化した以上、指導システムに特色があるのが当然ですが、私が最近お会いした父母の方々から聞きますと、HZ会もR会(Sセミナー)もN塾も大差ないというご評判をいただきます。
つまり、塾選びのポイントには残念ながら指導システムという要素はほとんど入らないということです。どこでも似たり寄ったりでは、他の要素が塾選びのポイントになっているのは当たり前です。
私は、知人に塾関係者が多い関係で、いろいろと情報をもらっていますが、だいたい次のパターンで、北海道の大手塾の指導は形になっているようです。(クラス指導の場合です)
↓
②指導内容を確認する小テストを実施する。
→基準点未満の生徒には居残り短時間補習の実施。
↓
③単元末テストの実施(英数のみが多い)
→基準点未満の生徒には居残り短時間補習の実施。または補習プリント配布。
↓
④定期テスト対策授業の実施。
→概ね試験日2~3週間前から特別時間割を編成し、それぞれの中学校の過去のテスト問題や業者テスト(学校教材系)をプリント化して演習を繰り返す。
※ついでに言うと、北海道の塾のテスト対策以外の通常時間数は、週当たり計6~7時間。内訳としては、英語数学が各1.5~2.0時間、残りが理社国(国語を実施しない塾あり)。恐ろしいことに、この時間数はゆとり教育になる前から全く変動なし!
何が恐ろしいかというと、理科を例に説明しましょう。20年ほど前の中学校では、週に理科は4時間授業がありました。今は、2.5時間です。それなのに塾の指導時間は変わらず1時間弱。
友人の理科講師は、「昔は英語が学校で3時間なのに塾では2時間もあるのはおかしい!と思ったが、今はそれを言えなくなった。確かに中身が薄くなった分、英語よりも成績は上げやすいけどね。」と言ってました。
学校の指導時間という目安があるのに、塾は何十年も同じ割り振り時間。大手塾が作ったシステムをたいして改良していないという一つの証拠でないでしょうか。北海道の塾業界にかかわる者としては、恥ずかしいと感じます。何か改善をしてもらいたいですね。
さて、塾の本来の顔というべきテキストなどの各種教材、これは各塾で取り組みが異なります。そのお話は次回に書かせていただきます。
お子さんを北海道の大手塾に複数通わせた経験のある親御さんは、それほどいないと思いますので、北海道の塾のテキスト比較をすることはなかなか難しいですね。私の知っている範囲で表にしましたので、参考にしてください。
※表中の「差し替え」は市販テキストに、自塾のブランドに見せるための表紙を付けていることを表します。「流用」は業者プリントや中学校テストの過去問題を使うことを表します。
表だけをみると、R会グループ以外は自作率が高いことがわかりますね。HZ会は組織の中に教材作成のみを行う専任スタッフがいて、そのスタッフが指導部門とは独立して教材を作る体制を20年以上前に確立したので、他の道内大手塾と異なり、独自性を打ち出すことにある程度成功しています。静岡本社のS英も出版部門が独立しています。NSスクールは札幌圏のみに等しい展開、つまり他の大手よりも規模が小さいため、テキスト自作といっても、学習ノートやプリントの製本版レベル、他塾ほど手が回らないのはしかたないでしょう。
さて、大問題なのはR会グループです。R会はその企業体の中に印刷部門があり、歴史的にもHZ会と遜色がないわけですから、すべてのテキストを自作していてもよいはずです。そのことを知人に問いただすと、次の回答があり、ハッキリ言いまして愕然としました。
①テキストやプリント作成を行うのは現場スタッフである。
→R会グループには各教科を統括する責任者がいる。彼らは教科指導に関してはほぼ権限がなく、教材作成の分担のみを行っている。おもにその責任者が教材作成をするが他の社員に近い授業時間(3割減程度)があるため、手元の作業時間はあまりない。HZ会的にする改革案を上申してもあまり取り上げられない。なお、現場の教科担当者はすべて各地域責任者(いわゆる支店長的塾長)に権限があり、教科を統括する責任者は指示一つまともにできないとのこと。
②業者との関係を保っているので講習テキストは自作できる。
→講習テキストのみ自作なのは20年ほど前に、ある社員があまりにも指導に即さない業者テキストに業を煮やし、その人物が自作したことから前述の教科を統括する責任者が任命され、軌道に乗ったとのこと。ただし、内容的にはオリジナル性は低く、市販品の合成に近い。そのため、著作権問題が生じないように、普段のテキストは業者から購入したものを使用しなくてはいけないらしい。
いや~、これが全て事実なら、情けないの一言ですね。あれだけ大きな組織になったのに、最も足場を固める部分が豆腐のように脆弱としか思えません。
ただ、HZ会のテキストもそれほどテイストが高いとは言えないので、困りものです。市販品を見る目が肥えている人なら「これは、あれのパクリかな?」と感じるページもあったりします。知人の話だと、HZ会は著作権がらみで訴訟直前で和解したこともあったそうです(事実かどうか未確認なのでこれ以上は書けません)。まあR会よりはましといったところでしょう。
残念ながらこれが北海道の大手塾の現状です。それに比べて、埼玉に本社のある「栄光グループ」はさすがに全国1の規模の塾だけにテキストは完全オリジナル、R会も採択したくらいです。なんせ出版部門は会社法人化されてますからね。「栄光グループ」ほどでなくても、自社テキストを市販できるだけのノウハウを道内大手塾が築けないですかね。
※オリジナルか市販流用かは、テキストの裏表紙をめくると一発です。そこに「このテキストの内容の疑問点は担当の先生に聞いてください」という内容があれば、市販品の表紙を差し替えただけのものとわかります。
前回で、教材(テキスト・プリント類)に対する状況がご理解できたと思いますので、今回は現場指導についてのお話をさせていただきます。
どんなに校舎がきれいでも、どんなに授業システムが精錬されていても、成績が上がらない塾にはどの親御さん方も大切なわが子を通わせたいとはおもいませんよね。
そうです、塾選びの最大のポイントは、形のある指導システムではなく『わかりやすく、成績を上げてくれる先生』がその塾にいるかどうかが重要なのです。また、授業環境が勉強しやすいかどうかも重要です。
「先生はわかりやすい。けど、教室はうるさい。」では、生徒本人のみならず、親御さんも嫌気がさすでしょう。教科指導力や生徒指導力は、はっきりいって講師個人個人の人間性と努力によって培われていくものです。しかし、新米の講師が突然授業をしてよい評価を得るということは、どんなにその個人が優れていてもあり得ないことです。
そこで大切になるのは、講師研修という名の指導システムなのです。大手塾の講師育成システムは、緻密に見えて、結構ザルなところもあるので困りものです。
講師研修のお話をする前に、大手塾の講師編成についてちょっとご説明します。第2回の内容にもありましたが、講師には常勤講師(社員および契約社員)と非常勤講師(アルバイト学生や社会人フリーター)の2種類があり、道内の大手塾ではその比率がかなり異なります。
①常勤講師のみで構成される塾
→静岡から進出したS英の小・中学部がこれにあたります。この塾は採用条件が厳しく、入社時の教科能力テストの基準点がかなり高いそうです。また、別項目で記載しますが、大学中途退学者は他塾のように入社することはできません。システム上アルバイトがいないので、新入時にハードルを高くして、講師の質を保っています。教科指導以外のさまざまな点から考えて、この形態が塾に通わせる親御さんの立場としては理想的です。
②常勤講師が多く、稼働授業の3割未満が非常勤講師で構成される塾
→R会グループは、これに属します。それぞれの地区に1教科あたり2~5人程度の社員を配置し、2~10人程度の非常勤講師を抱えています。非常勤のほとんどの週当たり授業時間が、社員の3分の1を超えない程度のようです。ただし、教室ごと、またはその教室の各クラス単位でみた場合、社員の講師は1~2名という場合もあります。
ただし、個別指導部門はその限りでなく、各教室には責任者のみが社員という場合がほとんどのようです。
③常勤講師より圧倒的に非常勤講師が多い塾
→クラス指導塾ではHZ会、NSスクール、Eゼミナールなどが当てはまります。また、個別指導を主にしている塾のほとんどもアルバイト比率が高くなっています。悲しいことに、非常勤講師が多い塾が北海道の大多数を占めています。この内容に異を唱える方もいらっしゃると思いますが、HPや求人雑誌、ハーローワーク、新聞広告でアルバイトの募集のお知らせがあったところばかりですから、どんな塾がアルバイトを募集しているかは、それらでご確認ください。
クラス指導の塾の場合、1クラスに1名の社員しかいないとお考えになって間違いないでしょう。場合によっては、すべてアルバイトの非常勤講師ということもあります。ただし、Eゼミナールあたりは1社員の担当教科は2~3教科ありますので、5教科を2名の社員ですべてカバーするケースもあるようです。
さて、講師が社員が主であろうとアルバイトが主であろうと、講師としてのスキルは研修を通して各個人に注入しなくてはいけません。そのやり方は、次回お話します。
※現在のメインブログ『北海道の塾考察』では、おもにクラス指導塾のことに関して記述させていただいています。個別指導塾、家庭教師に関しては、後日別項目を立ち上げますので、それまでお待ちください。
一口に講師研修といいましても、何を研修するのかわからない表現ですね。北海道の大手塾では多くの場合、クラス授業に立つための授業研修のことを講師研修と称しています。大手3塾では、その取り組みがかなり違います。
(1)S英…講師全てが社員なので、入社時から授業に立つまでの間、指導教科の板書事項、授業展開を資料として渡し、授業練習(模擬授業)を繰り返してから実戦投入となる。同一教科を担当する講師は、定期的に集まり、授業内容の研究会を行っているとのこと。(これは面接を受けた知人からの情報です。真偽は残念ながら確認していません)
(2)HZ会…社員講師に関しては、はっきりしないが個人の技量任せらしい。一応、板書事項をまとめた基本資料は存在する。アルバイト講師の指導は、社員が行わずに先輩のアルバイト講師が指導要点集を作成し、それをもとにアルバイト学生が集う中で研修が実施される。社員講師の主業務は、教室の生徒確保のマネージメントという位置づけらしく、講師指導はあまりタッチしない。
(3)R会…札幌圏のSセミナーと地方のR会では方法が異なる。Sセミナーでは各本部単位で教科の責任者がアルバイト講師が配属となってから、授業に投入されるまでの期間、模擬授業を繰り返し、合格点が出た段階で現場に立たせる。その後も生徒アンケートの評判などを分析してアドバイスをしていく。授業後は報告を各講師に義務付けている。板書事項は統一したものが使われている。
R会は、Sセミナーと異なり、統一した板書事項が存在しない。模擬授業は実施しているようだが、指示の仕方は各地域(というより各地域の教科責任者個人)に任されている。授業後の報告も各地域で異なる。よく言えば、地域の実情に合わせていて、悪く言えば会社としての統一性はない。かつては年に1回の社員講師による研修会が開催されていたようだが、現在は実施していない様子。
このように、取り組みがかなり違いますので、授業の質という部分でも差が生じてくるわけです。ご父母の評判ですと、札幌圏は「S英>Sセミナー≒HZ会」、地方は「S英>R会>HZ会」というのが総合評価といったところでしょうか。
しかし、全講師が社員であるS英以外の北海道の2塾では、評判の良いアルバイト講師が社員として採用されるケースがあるので、研修体制の割に評判をとっています。人事考課ができたアルバイト学生を登用するほうが手間がはぶけるのでしょう。
どちらの塾とは言いませんが、優秀なアルバイト学生を100万単位の契約金を支払って採用したケースもあったとのことです。汗を流して講師を成長させるより、金で片付けたほうが楽ということなのでしょうね。
つまり、情報が少ないS英以外は、「教室の評判=講師個人の評判」であって、塾のシステムや教材が高評価というわけでなく、その講師の取り組みが塾の評判なわけです。ある塾のA教室は、好評だがB教室は不評ということが頻繁に起こるわけです。
私は、最も重要な研修がまったく取り組み不足であることに憤りを感じています。授業や指導法など極論を言えばDVDやBDでモデルケースを作成し、それを受講する生徒に見させれば事足りる話です。
それなのに、直接に指導する教室タイプがすたれないのは、人と人との心のふれあいで授業が成立していることに他ならないわけです。その人と人との心のふれあいは、どのように指導しているのでしょうか?DVDの指導をメインに考え始めた北海道の塾にそれを求めるのは、無理なのかもしれません。
今回と次回は、前回に問題提起した「人と人との心のふれあい」についてお話しする予定です。が、それ以前に、この問題をふれるのに避けて通れない事件が2005年に京都府でありました。皆さんは覚えておいででしょうか。事件内容を引用しますので、まずご確認ください。
― 宇治学習塾小6女児殺害事件 ―
宇治学習塾小6女児殺害事件は、京都府宇治市の学習塾で2005年12月10日に発生した殺人事件。小学6年生の女児(当時12歳)が通っていた塾の講師(男・23歳)に刺殺された。
事件概要
被害者の女児の母親が塾に講師との関係が上手く行っていないと繰り返し相談した結果、犯人のアルバイト講師が担当する国語の授業を受講させないことになったため、講師は女児に対して逆恨みの感情を抱くようになった。しかし女児と講師との関係が上手く行っていない事に関しては塾側にも問題があったと言う向きもある。
犯行当日、講師は模擬試験の監督を外されていたが、包丁とハンマーを用意したうえで出勤し、模擬試験を受けに来た児童に「別室で国語のアンケートを取りたい」と言って退室を命じ、国語の授業を受けていない被害女児と2人になったところを包丁で刺殺。犯行後、警察に電話で自供し、駆け付けた警察官に現行犯で逮捕された。
犯人
犯人の講師は京都市内の同志社大学に在籍していたが、学内で窃盗行為を繰り返し他の学生の財布を盗んでいる現場へ駆け付けた警備員に怪我を負わせたとして窃盗と傷害罪で有罪判決を受けた前科があり、停学処分中であった。しかし事件の起こった学習塾側ではこうした前科は全く把握していなかった。
講師は幼少期に厳格な環境で育ち、お菓子やテレビゲームを与えられず、男女交際を禁止されていたと報じられている。その結果、学業こそ優秀であったが、親に対して家庭内暴力を振るうなど横暴な性格を見せ、コミュニケーション能力に乏しい傾向が有ったとみられる。公判中の際にも突然、大声で「僕を殺してくれ!助けてくれ!」などとわめき出すなど、奇妙な言動が目立っていた。2007年3月6日に京都地方裁判所にて懲役18年の判決を受けた。(求刑は無期懲役)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
※補足しますと、この事件の犯人が勤務していた塾では、アルバイト学生の勤務状況により社員へ登用する制度があり、殺害された児童との関係悪化でその道が閉ざされる事を恐れて犯行に及んだという報道も当時ありました。
この事件が起きるまで、道内大手塾の講師採用は当該人物の学力が大きな採用基準で、明らかなコミュニケーション能力不足が授業研修や初期の対生徒授業で発覚しない限り、そのまま講師を続けられるようになっていました。
その結果、さまざまな不祥事が塾内外で起きていたわけですが、大手塾の多くはそれをいかに発覚させないかに奔走し、根本的な対策は一切講じていませんでした。1つの事例を検証してみましょう。これは1999年に道内大手塾で起きた事件です。
事件概要
●帯広勤務の国語の教科責任者であった社員Aが幼児わいせつ行為の現行犯で富良野市において逮捕され、自宅からは幼児・児童のわいせつビデオが多数押収された。この社員は、小学生の教室責任者も任されており、父母対応や生徒対応では評判がよかった。その後、実刑判決が下されて服役した。
事件対応
●この塾が事件を知ったのは、翌日の新聞報道およびTV報道(犯人名は実名、塾名は報道されず)を偶然、数名の社員が見て気付いたからで、社員からの報告により事態収拾へと上層部が動いた。
犯人の採用状況等
この社員Aは、釧路管内で小学校教員をしていた時に同様の事件を起こして懲戒免職となっている(裁判は執行猶予)。採用担当者はその事件を知りながらAを採用した。また、元小学校教師であることから、再犯の危険を無視し10年以上も小学生の教室責任者としていた。また、釧路管内に新教室を開校した1985年頃、社員Aに対するクレームが地域の父母からあったのにも関わらず、釧路勤務ではないことを理由に上層部は無視していた。
他社員への対応
A個人に問題があったととらえたのか、報道管制以外の対応はなかった。特に、生徒対応のマニュアル化や私生活などに関する注意はされなかった。
この件は知人から聞いた内容ですので、若干の誇張もあるかもしれませんが、事件があったのは事実です。
この話を聞いて私が感じたのは、この塾の対応の甘さです。昨今、食品や再生紙偽装事件が世間を騒がしていますが、事件を隠ぺいしようとする体制、大問題が起きるまで放置する緊張感のなさなど、通じる部分が多すぎます。
また、わいせつ犯罪に関しては、その再犯率の高さも周知の事実です。そういう過去のある人物を採用した企業としての脇の甘さも指摘されてしかるべきでしょう。
現に、上述の『宇治学習塾小6女児殺害事件』後、他の道内大手塾はHPに声明を発表し、業界全体として考えていかねばならないことを公にしました。しかし、この塾はそういった声明を出しませんでした。この宇治市の事件以後、全国学習塾協会は次のような動きをして、業界の健全化に努めているというのにです(この塾も加盟している)。
“07年度から検定制度、人格面も 全国学習塾協会”
学習塾の業界団体である全国学習塾協会(本部・東京都豊島区)は、塾講師向けの検定試験制度を07年度に創設し、講師の倫理や行動規範についても評価基準に盛り込むことを決めた。京都府宇治市の学習塾で昨年12月、児童がアルバイト講師に殺害された事件を教訓に、講師選考に人格面の評価も取り入れ、資質向上をはかる。政府も制度構築を支援し業界全体に受験を奨励する考えだ。
検定制度は、全塾協が厚生労働省の外郭団体の補助を受け05年春から準備を進めていた。当初は教科指導の技術向上が目的だったが、事件を受け、法令順守の意識など講師の資質が備わっているかチェックするよう大幅に見直すことにした。
試験は全国の主要都市で全塾協が年数回実施。まず全塾協が策定した講師の「倫理綱領」や「行動規定」などをもとに半日の研修を行い、その後で研修の理解度や、学力、関係法令の知識を測る筆記試験を行う。
さらに、受験者から自分の授業をビデオ撮影した映像の提出を求め、言葉遣いや、服装、態度などをベテラン講師らが採点。試験結果に反映させることも検討する。資格は1年で失効するようにして、定期的な研修と適性チェックを促す。
全塾協は、加盟業者に講師を受験させるよう働きかけると同時に、非加盟の学習塾にも試験を開放する。塾業界を所管する経済産業省も受験を奨励する方針で、保護者の認知度も高め、業界全体の標準にしたい考えだ。
全塾協は、学習塾経営に関する情報交換や、認知度向上を目的に88年に設立された社団法人。事件の起きた京進など、大手学習塾を含む約700業者が加盟している。
出典: Yahoo!ニュース(毎日新聞) - 2006年1月12日
この塾が、いかに塾の行き帰りの安全のため、メール確認システムを導入しようと、内部をしっかりしなければ京進の二の舞となるような気がしてなりません。協会の方針を順守して、保護者が納得するレベルまで研修を徹底してほしいものです。
しかし、大きな問題点はそこだけではありません!道内大手塾には、「塵も積もれば山となる」小問題が長年放置されてきている事実があるのです。
ここ10~20年の間において、塾で起きた不祥事の情報は、大手塾に限っただけでも20件以上も私に情報として伝わっています。最近10年に限っても、次のようなことがあったそうです。
※その他、収賄や横領などを行った社員をまったく処分しないケースもあったそうです。
なぜ、このような不祥事が繰り返されるのかというと、そこには塾の指導スタッフに対する誤った姿勢が反映されているからなのです。HPでできる限り調べた結果、社員の平均年齢は25~33歳という塾がほとんどでした。
HZ会あたりは中途採用の場合、上限は28歳、R会グループでも35歳(一時期40歳というのもあったが)、経験があれば年齢不問で採用するところは皆無です。つまり、塾の講師をするためには、若さが必要と考えているからです。塾ごとにいろいろな言い分があるようですが、だいたい次の内容に集約されます。
人事考課の問題は、別な機会でお話しするとしまして、この若い人材のコミュニケーション能力を生かして塾経営することは、両刃の剣であることに大手塾は目をつぶってきたのです。
家庭教師先の生徒から聞いた話ですが、最近は公立の学校でも先生に対して敬語を使わず、タメ口・敬称略は当たり前のようです。私の中学・高校時代はそんなことはまずあり得ないことでした。
ただし、先生が何段階も上の存在で、教え方の上手下手を問わず近寄りがたい存在であることには不満がありました。さて、塾ではどうかというと20年ほど前から先生が若いこともあって、生徒目線で話をするようになり、生徒たちもタメ口でコミュニケーションをとることが当たり前になってきています。
つまり、「近い存在=よい先生」という発想です。ここ30年間で、集団の中の自分をとらえることより、個性を重視する風潮が広がったことにも関係はあるとは思います。ところで、年配の先生が若いふりをするとの若い先生が若くふるまうのはどっちが楽かというと……、愚問です。後者に決まっています。
若い先生(講師)は、地で接することが生徒にとってよいことと強く認識しているのです。塾の経営者サイドも、若さを美徳とのみ考えて、野放しにするのです。
昔から塾業界にはこんなたとえがあります。
※中学生に1~4に順番を付けさせるとすると、生徒受けする順は?
→1がよくて、4が悪いのは当たり前ですが、正解は1>3>2>4の順です。面白さは、わかりやすさに優先するのです。若い先生は3のタイプであればいいわけなのです。高校生の場合は、さすがに大学進学がかかるので、1>2>3>4となるそうですが……。
私たちの世代が20代のころは、学校を含めた先生が高い位置にいる存在であることを認識しつつ、生徒とコミュニケーションをとってきた世代です。しかし、今の20代の講師は、生徒と先生が同目線なことを当たり前に考える、いわば未成熟の世代といってよいでしょう。
恋愛感情や人間関係において、中学生とほぼ同次元にしか発想できない者も多いのです。そのような講師に対して、塾経営サイドは、あの京都府の事件までまったくといってよいほど人間教育をしてこなかったのです。冒頭の不祥事は、まさに人間教育の欠如が生み出した結果でないでしょうか?
無論、私たちの世代にも一部恥ずかしい不祥事を起こすものがいるので、若い世代ばかりを非難できませんが、あまりにも学生アルバイトや若い講師の不祥事は多すぎます。
ある塾の経営者は「これからの北海道を託す人材を輩出するために、塾を創業した。」と言っているそうですが、自社の社員やアルバイトに対する人間教育ができないのであれば、どんなにチラシ広告に立派なことを書いても、心には響きません。
指導法だけしっかりしていればと考える塾は、パソコン指導ソフトの開発に走ったり、DVD指導塾と提携して、ますます講師教育を軽視するのではないでしょうか。
前回謎かけした「塵も積もれば山となる」小問題は、大本をたどると、若さのみに頼った指導者としての資質無視の講師投入体制に、大問題があるのです。はっきり言います!講師研修は、教科指導スキルより、人として小中学生の模範となる講師を育成する方向に転換してほしい。
人材管理能力のない塾が北海道の塾業界のリーダーシップを執るのは間違っています。それが出来なければ、いずれ道内大手塾は衰退していくでしょう。
3章『合格実績の功罪』編の前に、時期も旬ですから、春期講習の話題をしたいと思います。こんな章番号を挿入することをお許しください。
この原稿を書いている2月19日現在、大手3塾の広告チラシがようやく出そろいました。札幌圏の各塾のアピール内容と折り込み日をまとめると、次のようになります。
1月末にHZ会が『春期講習0円!!』チラシでまず切り込んできて、その動きを見極めたSセミナーが、『新学期申込みの方は春期講習は教材費だけ!!』と返す刀で切り返したというところでしょうか。
ところで、S英は新学期の募集だけの内容をB4両面に掲載し、春期講習に関しては一切ふれていません!誰もが疑問を感じる広告活動としか、言わざるを得ません。そこで、保護者のふりをしてS英本部に電話してみたところ「春期講習は、日程・費用とも検討中で、ご案内できるのは3月初めになります。」という、唖然とする回答が返ってきたのです。この回答からS英いや、大手塾全体の春期講習の位置づけがあからさまになってしまいました。
S英が北海道に進出する以前、各塾の春期講習費は、概ね以下の金額でした。
この料金設定はわりと根拠がありました。春期講習は、夏冬に比べ、小5~中2は日程的に2/3の期間、中3は半分の期間なので、夏冬の講習費比率から算出された受講費になっていたのです。
ところが、S英が北海道進出時に、講習0円策を打ち出し、それに危機感を持ったHZ会も同様の策をとったことから、春期講習の価格破壊が始まったのです。保護者の皆さんにとっては、塾の指導を安い金額で受講でき、新学期指導を体験できる機会の増加となったわけですが、そもそも春期講習は、生徒さんにとって有益なのでしょうか?
今回から、新章に入ります。この章で考えたいのは、北海道の大手塾が北海道の教育現場に何を寄与してきたかということです。私学を含めた学校教育の抱える問題点とともにお話していきます。
私立高校入試もA・B日程とも終了し、早い高校では合格者の発表も始まっています。昔と違って、新聞に合格者名が掲載されなくなったのには一抹の寂しさも感じますが、個人情報として氏名が掲載されることによる二次的な問題がおきないだけ、ましかなと思う昨今です(二次的な問題に関しては、塾選び・家庭教師選びポイント『これは塾・予備校じゃない!』参照)。
さて、今月末の各塾のチラシ広告にご注目なさってください。「速報!!難関私立××高校に当塾から▲▲名合格!!」という文言が、あたかもルーチンワークのように繰り返されるはずです。ついでに言うと、1ヶ月後には公立高校の合格者数が塾に通っている生徒の氏名入りで発表するチラシ広告が氾濫するはずです。
まあ、高校合格実績数こそ塾の命と考える、進学塾のふりをした補習系塾である北海道の大手塾にとっては、大切な一大行事といったところでしょうか。
ところで、掲載される私立高校というと「函館ラ・サール」「函館白百合LB」「函館遺愛特進」の函館勢と「立命館慶祥」の4校に偏ります。まあ、一部塾では「北海特進」なども掲載しますが、問題は発表に値する学校かどうかということです。
高校の実力=有名大学への進学実績とすれば、それを検討してから論じたほうがよいですね。まず、下記の表をご覧になってください。これは、北海道内有名校の合格実績が比較的よかった平成18年度の合格実績を比較したものです。
※高校によって、現役生・浪人生を合算で発表するところもあるので、比較しやすいように現浪合算にしています。また、各学校ごとに生徒数も異なりますので、浪人生までを含めた占有指数(学年の何%がその大学に合格したかを示すとお考えください)が学校の実力を示すようにしています。
この表でお分かりになると思いますが、北海道内の高校の北大合格実績は札幌南北の公立トップ校が群を抜いており、中高一貫教育で成果を上げている北嶺中高が東大・京大などの難関大学に強い(北大志望より中央志向が顕著)ことが見受けられます。
北海道の大手塾がチラシ広告ターゲットにする函館ラ・サール高校は、20年ほど前の実績と比べるとかなり衰退していますし、立命館慶祥高校に至っては、大手塾のチラシ広告で取り上げられない札幌光星高校を下回る実績です。
実際、札幌圏における立命館慶祥高校の位置づけは、札幌東西南北等の上位高の滑り止めにすぎないと考えていらっしゃる方が大多数です。その立命館慶祥高校がなぜ、北海道の塾の広告塔となっているのか、疑問を感じないでしょうか?そもそもどんな高校なのでしょうか?
私が家庭教師をしている生徒さんに、立命館慶祥中高3年の方がおり、実情をお子さん・親御さんにお伺いしたところ、次のお話をいただきました。
※(1)数学の教科書は、他の中高一貫校同様に数研出版『体系数学』を採択しているが、Ⅲを指導する前にⅣを先に指導した。その結果、三角関数の単元において、3次式の展開・因数分解、2次関数を履修していないことによる弊害が生じていた。
これらの点から類推すると、慶祥高校の姿勢としては、系列大学の経営安定のため、多くの内部推薦者を輩出することが重要であって、他の大学をできるだけ志望しないようにするプロパガンダがなされているのでは?と感じます。
そういえば、上記表の他の5高校(公立は当然として)は系列大学がないところばかりです。『大学合格実績≒学校法人の評価』となるのであれば、いかに有名大学への合格者を輩出するかが学校法人の存続にかかわってきます。慶祥高校の姿勢には、それが大きく関係しないということなのでしょう。
もちろん、慶祥中高へ子息を入学させる親御さん方は、最初から立命館大学への進学など望んではいない方がほとんどです。学力レベルの高い私学だから、有名他大学へのステップとして入学させるというのが本音でしょう。
そういった学校の姿勢は、札幌圏では口コミでかなり広がっていて、他のHPなどにも記載されていたのを見たことがあります。しかし、北海道内の他の地域では、そういった現状を知らずに、地域の進学校では不満ゆえに慶祥高校へと進学(公立との併願の場合、慶祥を選ばせる)させるケースが多々あります。
それゆえ、上位層が地方出身者で固まるのです。もちろん、地方出身者の中にも立命館大学へ進学する生徒は多数います。それは親御さんの本意ではなかったことであろうと思われます。
それでも札幌圏以外では、立命館慶祥高校信仰は強いものがあります。1995年開学のいわば新規参入校が、開学当初から進学校の地位を固めたのは何故なのでしょう。実は、そこにかかわってきたのが北海道内の大手塾なのです。
知人から聞いた話では、開学から3~4年の間、慶祥高校は『指定塾推薦』という制度を設定して、中学校推薦だけでなく、大手塾の上位クラスに所属する生徒の推薦入学も受け付けていたそうです。その知人が担当していた生徒の1人が支店担当者の斡旋で合格できたと、彼は話していました。
無論、推薦以外でも受験者を増やすべく大手塾に交渉したことは想像できます。確かに、その当時の大手塾の進学説明会には、必ずと言っていいほど高校の関係者が招かれていました。
そういった経緯なら、大手塾が生徒・ご父母に慶祥高校を推すのも当然でないでしょうか。いわば、「大手塾の広告戦略の延長線上にその高校があった。」ということになりませんか。
つまり、大手塾は、慶祥高校をうまく利用して自塾の合格実績のアピールに成功し、高校側は生徒募集に成功したわけです。その開学初期のイメージ戦略の成功は、高校イメージの定着へとつながり、地方での信仰が継続していると私は考えます。
そういった大手塾の姿勢が、各地域の親御さんへ様々な影響を与えていきます。そして、地域の学校教育にも影響は波及していったと……。
あと3日もすると、道内学習塾の最大イベント「北海道公立高校入試」が実施されます。静かに受験生を見守るならともかく、前日の新聞全面広告~入試早朝の受験生激励(ほとんど塾アピールです)~夕方の入試速報(HBC,TVh)を主催してのCM攻勢には、企業としてのすべてをかける塾側の姿勢が滑稽に思えてなりません。
そういえば、R会のSTVでの入試速報は数年前から取りやめになっていますね。局側とトラブルがあったのか、純粋に企業サイドの事情なのかは知りませんが、他のHPで解答速報を得られる時代ですから致し方ないところでしょう。
さて、札幌圏の中学生塾戦争は、今やHZ会・R会(Sセミナー)・S英とNSスクールがしのぎ合う形ですが、開設2,3年のS英と老舗のHZ会、Sセミナーの勢力分布は次のようになっています。
私ごとですが、このデータを作成するのには思いのほか時間がかかりました。というのは、3塾で取り上げた公立高校で実績が共通するのはこの5校のみという事実があったからです。開成、藻岩、北陵、国際情報、手稲、大麻、啓成などはHZ会は広告やHPなどで未発表です。Sセミナーはほぼ網羅していますが、S英もぬけがあります。
実は、HZ会に直接TELして問い合わせたことがあったのですが、教えてくれませんでした。つまり、合格者実績発表は都合の悪い高校は発表しないということなのです。まあ、入試合格者平均点が150点未満の高校で、占有率50%以上と叫んでも何の価値もないですけど、進学校という位置づけの高校はすべて発表するのが道理ではないでしょうか。その点だけではSセミナーの姿勢は立派です。
表の実績を額面通りに見ると、巷ではS英の飛躍が取りざたされていますが、まだまだHZ会強し!!というところです。札幌圏のような塾乱立地域では、1つの塾が合格者の占有率50%以上を占めることはほぼ不可能ですから、HZ会がいかに健闘しているかわかるデータです。
Sセミナーは南・北の実績が老舗の割にお寒い結果です。まあ、現状の第2、5学区に教室展開の重点を置いている以上仕方ないでしょう。S英もHZ会の教室規模の3分の1での結果としては上出来でないでしょうか。
しかし、それはあくまでも額面通りに見た結果に過ぎません。この合格者数には数々の問題や見解の相違があるからなのです。大手塾の合格実績は、会員数と銘打って発表していますが、会員とは「塾継続生+短期ゼミ参加生」のことを指します。実は、この会員の取り扱いが曲者なのです。
◎塾継続生のとらえ方:無論、継続授業を塾生として在籍して受講した者を指す。
※各塾での塾継続生はこの4つの見解に分かれますが、4を打ち出しているのは個人塾か『現役予備校TANJI』くらいなものです。
◎短期ゼミ参加生のとらえ方:短期講座参加生やテスト受験生を指す。
諸問題がおきるので、どの塾がどれを採択しているかは書きませんが、さまざまな見解が交錯するため、実績数を同一の基準で見ることは難しいということを御認識ください。
ただ、公正取引委員会の基準としては「塾継続生は中3以降で在籍」「10日未満の短期ゼミ生は実績外」というのがガイドラインのようです。
ちなみにS英は2007年1月に公正取引委員会から2006年度の高校入試の合格実績で短期受講生も含んでいたとして注意を受け、10日未満のゼミ(春期・入試対策ゼミが該当)を排除した実績に切り替えざる得負えなかったそうです(続き参照)。
各塾の基準が違うと、同一条件で合格実績を比較することほど無意味な作業はありません。作表した自分がちょっと情けなくなりました。それでも、目安には百歩譲ればならないこともないのですが……。
ところで、どの塾も共通して不合格者数(不合格率)は発表しないですね。1986年春にR会が一度試みたことがあり、他塾でアルバイトをしていた私もその時は感心しました。残念ながら、その後はR会でも立ち消えになっています。こういう広告こそ、塾の真摯な姿勢の象徴と思うのは私だけでしょうか。このHPをご覧になっている塾運営会社の方がいらっしゃいましたら、ご検討ください。
公立高校入試を終了し、各塾は今頃入試の自己採点結果を集計して、各生徒の合否予想を算出しています。合格発表直後にチラシ広告を出すには、この時点で、合格決定でないのに合格体験記を書いてもらわないと間に合わなくなる事情もあります。子供たちの文章にはじけるような喜びが乏しいのは、そのためでしょうか?
前回お話した高校の進学実績広告の続きです。札幌圏ではありませんが、過去に実際にあった摩訶不思議な事件を紹介しましょう。
ある地域の進学校においてR会の実績とHZ会の実績をトータルすると、その高校の定員をオーバーする人数になったそうです。
なぜか? 重複カウントの生徒がいるからです。たとえば、A塾の塾継続生が1回でもB塾のテストを受けるとWカウントですし、B塾の中3春期講習を受講した生徒が4月からA塾の塾継続生となれば、これもWカウントです。前回の内容を読んでいただければ、この例のようなWカウントは「?」と思いますね。
当時のR会の広告チラシには、“当塾は短期のテスト対策ゼミやテストのみの生徒を実績として含めません”と他塾を牽制した文言が強調して掲載されていました。わざわざそんな当たり前のことを載せたということは、R会グループは、おそらくライバル塾HZ会に対して怒ったのでしょう。
ライバル塾との実績競争の中で、その反撃は開始されました。1つは別項目にも記載した「HZ会塾費用偏差値事件」の雑誌へのリークです(知人曰く、会社代表自らがリーク宣言したとのこと)。
しかし、これは公正取引委員会からおとがめなしの裁定が出されてしまいました(昨年あったマクドナルドの地域価格認定の例からして当然)。次に、自塾の高校での占有率&NO.1戦略でのアピールで、差別化を図り始めたのです。こんな広告を見たことないですか?
この、円グラフを多用したインパクトのある広告はなかなか迫力がありますね。R会は、HZ会よりも実績をはるかに上回った地区から、この円グラフを多用したチラシ広告を開始しました。
HZ会は追従したくても、実績がなかったために合格実績人数のみの広告をするしかなかったのでしょう。そのうち、大きく実績に水をあけられるようになると、A高校+B高校で何名とか、かなり苦しい数字遊びを始めます。それでもだめなら、近年のように過去累計で何千人トータルで合格者輩出!! と数字遊びに輪をかけ始めます。
はたで見ていても見苦しい限りです。そうすると、内部でも反撃策の検討となり、R会NO.1攻勢に歯止めをかける作戦をHZ会は全社的に開始したのではないでしょうか。
2000年代になると、HZ会は氏名入り広告を取りやめます。個人情報に関して社会的に敏感になった風潮が広まったことが主な原因でしょうが、他にも理由があったのかもしれません。
R会は、「ライバル塾がやるならうちも…」と考えたかどうかはわかりませんが、算定基準をゆるめてしまいます。何と愚かな行為なのでしょうか、R会の脇の甘さを象徴しています。その結果、次のような事件へと結びつくのです。
道内大手の学習塾「R会グループ」を運営する「R」(本社・帯広市)が、広告に不当な表示があった疑いがあるとして、公正取引委員会から、景品表示法違反のおそれがあると警告を受けていたことが、22日わかった。
Rは、1977年の創業。関連会社とグループを作り、「R会」という名称で、道内11都市で約150学習塾を運営し、約1万7000人の生徒がいる。
Rによると、警告は、昨年の新聞や折り込みチラシに出した広告に関してで、〈1〉4月の「道内公立高校の合格実績ナンバーワン」とした広告文について、2番目の進学塾と同時期の合格者数を比較していない、〈2〉6月の広告に出した合格者数に、中学1年生や2年生のときに在籍した生徒も含めた、の2点を指摘された。同業の学習塾運営会社が、Rの広告に不当な表示があるとして、訴えていた。
出典: 『読売新聞北海道版』2003年7月23日付
なにが問題で警告を受けていたかというと、「××高校占有率NO.1!」と広告に記載した時期には、他塾との数値比較がなされていないことでした。かつては占有率でしのぎを削って争っていたHZ会にとっては、格好の攻撃材料だったのです。「同業の学習塾運営会社」というのは、どう考えてもHZ会かと思われますしね。
もちろん、R会が黙っているわけはないでしょう。反撃策を検討して、逆告発の道を選ぶのは既定路線でしょう。HZ会が広告上、過大な表現をしている部分を攻めていきますよね。
公正取引委員会は17日までに、HZ会などを展開する大手進学塾、SG会(札幌)が、チラシに昨年春の高校合格者の実績を全国一などと載せたのは景品表示法違反(優良誤認)の恐れがあるとして、文書で警告した。
公取委の調査によると、同社は昨年6月から配布を始めたチラシやダイレクトメールで、同年春の合格実績を「高校合格者全国No.1」「公立高全道ナンバーワン」とPRしてきた。だが、同社が「1万8386人」と掲げる全国一については、各塾の算出方法の基準が異なるため、「適正な比較ではない」(公取委)と結論付けた。道内公立高の合格実績については、同社以上に合格者が多い塾が存在し、「全道一とは認められなかった」(同)。
公取委は、同社の表示が消費者に、実際や同業者よりも著しく良いと誤認される恐れがあるとして、今後同様の表示をしないよう、14日に警告した。これに対し、SG会は「担当者不在で分からない」と話している。
出典: 『北海道新聞』2004年1月18日付
私が、疑問を感じるのは、R会の警告からわずか半年足らずで公正取引委員会が道内塾に再度警告をしたところです。これには何らかの圧力があったと考えざるを得ません。おそらく、これがR会の反撃だったのではないでしょうか?
ちなみに、2004年頃にR会グループ取締役副社長が退職しています。真偽は不明ですが、「事態収拾後に責任を取らされたのでは?」と知人は話していました。まあ、彼自身がその役員をかなり嫌っていたようなので、邪推しすぎのような気もしますが……。
正直に申し上げて、1990年代から現在における、大手塾同士の占有率合戦には、閉口するばかりです。それは単に、醜いばかりの私立有名校・地域公立進学校の合格者数争いのことばかりではなく、ここ20年間余りでの、各地域の教育現場にもたらした影響が大きいからなのです。
功罪①、②、③ではおもに札幌圏を中心にお話してきましたので、今回は他の地域についてみていきます。すべてを取り上げるとキリがないので、代表的な5地域の合格実績を見ていきましょう。
札幌圏で生活している私には、残念ながらHZ会の各地域の実績数値は正確に把握できません。というのも、冬期以降のチラシ広告やHP、受験雑誌のいずれを見ても単年度実績を発表していないからです。
HZ会には、消費者が同じ土俵で他塾と比較できるよう、HPなどに通年で道内の進学校単年度実績を掲載して頂きたいと私は要望します。
ただ、情報として北見北斗以外の4校の占有率が10%台、北見北斗に至っては7~10名程度しか合格者を輩出していないということは伝わってきています。つまり、札幌圏以外ではR会とのシェア戦争に大苦戦しているということでしょう。
という訳で、今回はデータ数値のはっきりしているR会を軸にお話していきます。
R会は、発祥の地である帯広での強さは抜群といってよいでしょう。有力な地元塾も存在しないので、まあ当たり前というところですね。他の地域も30~40%以上ですから、無類の占有率といってよいでしょうが、ここで3地区に絞って分析するとR会の抱える悩みが見えてきます。
(1)旭川地区
かつては旭東の占有率は50%強の時期がありましたので、「S英予備校」が開設1年にしてはかなり健闘しているといえます。
札幌圏では多くの塾との競合のため、思ったほどシェアを伸ばしていないS英ですが、旭川ではそのターゲットをR会のみに絞れる利点があります。R会が今後、この占有率を維持できるかどうかは疑問です。
(2)釧路地区
近年ようやく、占有率がNO.1になった地域です。1985年の開設以来、実のところR会は釧路地区にはそれほど力を入れていなかったと巷では言われていました。
というのは、釧路古参塾の「あすなろ会」がR会開設当初から釧路湖陵の占有率50%以上の塾であり、R会と大きく異なるカリキュラムや教室展開が地域で評判を得ていたためです。R会は、他地区のような本部集約型の教室展開を10年以上採れず、「あすなろ会」に迎合した形だったのです。
R会が本部型集約形式に転換し、ある程度シェアが伸びてきたころ、今度は「あすなろ会」が魅力的なカリキュラムを捨てて、R会スタイルへと転換してきました。その結果、組織力に勝るR会に占有率で逆転されたと思われます。
釧路地区の例から判断すると、HZ会など類似形態の塾にはまだまだ優位性をR会は保てるというところでしょう。
(3)北見地区
1990年の北見北斗高合格者占有率はほぼ70%であったことはご存知でしょうか。その急落の原因は、もちろん「志学会」の存在です。
「志学会」の代表田巻氏は、1992年まで「北見R会」の塾長であり、(株)Rの初代社長を兼任していた人物です。いわばR会グループのNO.2であった田巻氏が、R会グループ会長との方向性の違いからR会を辞し、北見地区のために1992年に創設した塾が「志学会」というわけです。
小規模の教室を展開せず、中心街に1会場のみを構え、「わかるまで、できるまで」を信条とした徹底指導を行う塾。その塾は、中学の3年間のみならず、高校進学後も面倒を見てくれます。そのためか、塾継続生の70%以上が、北斗および有名私立高校へ合格するハイレベルな塾として地域に根付いています。
R会の実績は、「志学会」の通学圏以外の旧留辺蘂町、美幌町の生徒を合わせて、ようやくあの数字なのです。
とまあ、いろいろな問題点がありながらも、R会の札幌圏以外での強さはなかなかです。この表にはありませんが、開設10年程の南空知地区で、かつてHZ会が70%の占有率を誇っていた岩見沢東高実績を抜き、ついに占有率50%を達成しています。
R会が今のところ成功をおさめている理由を考察すると、塾としての指導の素晴らしさが評価されたというより、競争相手のかかえる問題で伸びてきたという気がします。その理由として、私は次のように考えました。
●R会が本格的に道内展開を開始した1980年代中盤から後半は、HZ会が道外へ進出し始めた時期と一致すること。そのため、戦力を道外に注がざるを得ず、R会に対抗する体制を作れなかったのではないか。
●R会は、HZ会の方針をよく研究し、その弱点を自塾の利点とすべく、システムを構築したのではないか(国語指導の取扱いがよい例)。当時、HZ会がシェアを拡大していた地域ほど、その不満層を取り込みやすかった。
●月謝・諸費用がHZ会よりも低価格であった。後年、HZ会が低価格コースで対抗してきたが、逆にブランド価値を低下させることにつながったとの評価が多い。
→「あすなろ会」よりも割高感のあった釧路地区は、R会は逆に苦戦を強いられていたが、「あすなろ会」の方向転換により、その不利が解消されて実績が伸びた。
北見地区のように、地元に志のある塾(まさに志学会は適切なネーミング!)ある地区では、札幌圏を含めて苦戦しているのがその証拠でしょう。
しかし、ここ20~30年間、HZ会およびR会が北海道の塾業界のリーダーシップをとってきたのは紛れもない事実です。
皆さん、是非①~④を読み返してみてください。この2つの道内大手塾は共通して、次の方針で実績を作ってきていませんか。
その結果、札幌圏以外の教育現場に何をもたらしたか。その続きは次回お話しいたします。
残念ながら、2008年度入試のデータは、これから合格発表となる時期ですので、昨年度の各地域別北海道大合格者の推移表をもとに、お話していきます。北大の昨年度入学者2644名中、道内出身者は1320名。ざっと49.9%の占有ですから、一頃に比べて、道内勢は健闘しています。さて、出身高校の地域別に比較すると、次のような結果となります。
(補足)14支庁のすべてで統一された統計データが存在しないため、正確な当時の高3生の人数は不明ですが、札幌市で18,400人、過疎化の進む空知支庁で3,400人という数値が出ましたので、ほぼ各地域人口の1%が受験対象の高3生の人数と考えて算出させていただきました。また、札幌日大付属高校(北広島市)・立命館慶祥高校(江別市)の2校に関しましては、生徒分布上、札幌市に含めております。
表をご覧になると明らかですが、札幌市内の高校出身者が北大合格者の3分の2を占め、近郊の石狩管内と合計するとほぼ70%を占める結果となります。これは受験人口から考えると、ほぼ2倍の値になっています。
確かに、地方の高校と比べれば、札幌圏の高校の指導能力は高めであると考えられます。また、北大は札幌市内にある大学ですから、札幌市からの進学者が多くなるのは当然でしょうし、地方では札幌へ進学するも、首都圏や関西圏に進学するも、実家から離れることに変わりないので、それほど北大志向が強くないという現状も理解できます。しかし、それを踏まえても、札幌市内生は50%程度占有が妥当なラインでないでしょうか?
そこで考えられるのは、大手塾の進学実績を上げるための進路指導との関係です。例年、HZ会、R会などの実績を合算してみると、地方から札幌圏の高校へ進学する生徒が200~300名存在している事実をご存知でしょうか。おそらく、石狩支庁からの合格者900名のうち、120~200名は他地域からの留学生が占めていると推測できます。
大手塾が「進学塾」であることを知らしめるには、地域の進学校の実績数だけではなく、札幌圏の有名公立・私立高校の実績数が大きな鍵になってきます。そのために、各地域の上位の生徒を、数多く札幌圏の高校を受験させ、進学させることが重要になるわけです。その結果、地方には最上位の学力をもった生徒以外が地域の1番手進学校へ出願することになります。
ただ、この札幌留学の現状をすべて否定するつもりはありません。例えば、根室高校・稚内高校のように、地域の1番手高でありながら、学力分布が幅広い学校(最低合格ライン入試学力点4~5割程度)なら、どう頑張っても1~2名の北大合格者を出すのが関の山でしょう。
それなら、進学指導のしっかりした札幌圏へ送り出すのもわかります。しかし、最低合格ラインが7割強の進学校のある地域であれば、そこまでする必要性は乏しいと感じます。
それぞれの地域の高等学校で、大学の進学実績を上げる努力はまったく惜しんではいないからです。先日、新聞にこのような記事が記載されていました。
“医学部受験支援9校決定 函館中部、岩見沢東、北見北斗を追加”
地域医療の担い手確保のため、道と道教委が2009年度からの本格実施を予定する道内高校生の医学部受験支援策で、道教委は7日、受験指導を強化する道立の「医進類型指定校」を、函館中部、岩見沢東、北見北斗を含めた計9校とすることを決めた。
これまで指定校として判明していた小樽潮陵、旭川東、室蘭栄、苫小牧東、帯広柏葉、釧路湖陵の6校に加え、「道内のすべての圏域で担い手確保を図る必要がある」(道教委幹部)と判断し、3校を追加した。
道教委は指定校をこの9校で確定させ、新年度予算案に1200万円を計上、支援策の一部を前倒しして実施する。このうち指定校の生徒による医療機関見学などには530万円を充てる。
指定校以外の生徒にも医学部への進学動機を高めてもらうため、3泊4日で医療現場を体験する「メディカルキャンプ」(310万円)や、各管内で医師の講演や出前講座(360万円)も行う。
受験指導の強化には、特に理数系教員の増員が必要となるため、「国の補助事業などが活用できないか検討中」(道教委幹部)で、各指定校での本格的な受験指導は2009年度からになる見通しだ。
出典: 『北海道新聞』2008年2月8日付
おそらく、これらの9校は、道に強く陳情したのではと想像します。これこそ、進学校の強い意志の1つの現われ方でないでしょうか。頼もしさを感じます。
ところで、上記の9校にはある共通点があります。それは、大手塾の進学実績のターゲットになる札幌圏以外の進学校であることです。
大手塾は、優秀な生徒を札幌圏に大量に送りこみつつ、地域進学校の実績数を積み重ねばなりません。そのため、本来は2番手の高校へ進学するレベルの生徒の得点力を引き上げる方策に出るのです。
昨日、道内公立高校の合格者が発表になりました。今日の時点では、各塾のチラシ広告は残念ながら出そろっていません。どんな感じの文言が載るのか、ちょっと楽しみです。
それにしても、帯広三条高校の失態は何なのでしょう。20分後に貼り替えればいいというものではないですよね。どうやったら昨年の合格者を貼るなどという失態をするのか、学校関係者の良識を疑います。
各塾の継続授業において、定番になっている特別授業が大きく分けて2つあります。1つは、定期(中間・期末・学年末)テストや中3学力A~Cの対策指導。もう1つは入試直前に実施する模擬テストゼミです。もし、道内大手塾がこれらの特別授業を廃止したなら、合格実績は何%減となるのか。おそらく、かなりのパーセンテージとなるでしょう。そのくらい、これらの特別授業は重要なのです。
勘違いなさらないように、ご説明しますが、特別授業の目的は、学力アップではなく得点力アップです。早い話、生徒に学力が身に付かなくても、テストの点数だけはそこそこ取れるようにする授業です。
定期テスト対策では、各中学校の過去問題を活用した教材や学校教材プリントを印刷したものを用い、テスト前2週間ほど、家庭学習が不十分でもテストに対応できるように、徹底的な詰め込み指導をします。その結果、定期テストでそこそこの得点をゲットし、内申点が上がるというわけです。
学力テスト対策は、各塾とも専用の過去問題テキストを生徒に配布し、類題率が高い「北海道文化協会」作成のテストに立ち向かわせます。予め、似たような問題をやってますので、ここでもそこそこの得点をゲットします。
そして、極め付きは入試直前に実施する模擬テストゼミです。もうほとんど、入試そっくりな予想問題を5~6回解き、入試への対応力をつけさせるのです。ここで出題した予想問題の類似度は、塾のよい宣伝材料にもなります。
もし、中3の4月時点で同学力の生徒が2名いて、1名はこれらの塾、1名は自宅学習のみであったとしたら、入試での得点力や内申に20%以上の差が生じる可能性があります。このように、大手塾の切り札とも言うべき、特別授業は、ボーダー以下の生徒の得点力を引き上げ、進学校へといざなっていったわけです。
「○○君は、××点伸びて入試合格を勝ち得た!!」という宣伝は美しく聞こえますしね。と、いう作戦のもと、地域の上位生を札幌圏に送り込んだ大手塾は、中位~下位の生徒の得点力を引き上げて、進学実績を保てるのです。このパターンは、ここ20年以上、どの地域でも起きていることです。
その結果、進学校の大学合格実績は下降の一途をたどります。その理由は、すこぶる簡単です。
私の家庭教師仲間の1人は、塾講師時代にとても面倒見がよく、卒業した塾継続生の数学や物理、化学を教えてあげることが多かったそうです。しかし、「金にならない指導はするな!」と上司から禁止され、泣く泣く対応を止めたそうです。もちろんその塾は、小中生までしか指導をしていません。
また、高校教師の友人も、最近の生徒たちの自学力のなさにかなり閉口しています。彼は、かなり塾を敵視していて「塾は成績を上げ底にして、高校現場を崩壊させる元凶だ!」と同窓会で吠えていました。
彼ほど極端でなくても高校教員の方々には、そのような思いが多かれ少なかれあると私も思います。そんな生徒たちばかりを進学させて、合格実績が上がるわけがない。もっともな声でしょう。
大手塾が、進学校合格者占有率を上げれば上げるほど、高校の大学実績が下がっていく。生徒の自学力を鍛えられない塾には、存在意義はないと私は考えます。そろそろ方向転換してもよいのではないですか?本気で、大手予備校並の高校部を作り上げてもよいですし、地元の高校へ鍛えた生徒を送り込んでもよいとも思います。
今回の功罪シリーズのまとめとして、一つの希望をお話して終えます。それは、北見北斗高校の北大合格実績が復活基調であることです。⑤で書いたように、北見では「志学会」というすぐれた地元塾が根付いています。高校までしっかり面倒をみる姿勢が、地域の教育現場に寄与しているものは大きいですね。北海道の塾がすべて志学会や現役予備校TANJIのようになれば、子供たちにとって幸せかもしれません。
北海道の塾には、真の意味で私教育をリードする塾はあるのでしょうか?
その疑問に答えてくれる北海道の塾は少なくとも2つはあります。1つは、札幌市で1953年に開校した『現役予備校TANJI(旧丹治進学教室)』、もう1つは北見市で1992年に開校した『志学会』です。
『現役予備校TANJI』は、現存する北海道の塾の中で最も歴史のある塾です。言い換えれば、この50年以上の激動する私教育環境の中で、一貫した方針を持って生き抜いてきた志(こころざし)確かな塾であるということです。
『志学会』は3章でも書いたように、「北見R会」を辞した田巻氏が、地域社会への貢献を私教育を通じて行うために開校した塾です。この15年における活動の評価は、大手塾を凌駕するような進学実績がすべてを物語っているといえます。
私がこの2つの塾を「私教育リーダー塾」として位置づけるのは、次の理由によるものです。
①大手塾のように中学生のみに特化した形態ではなく、小中高一貫指導を実践している。
②創業者(塾長)の崇高な志をすべての社員に浸透する運営を行っている。
③不必要な営業活動はしない。
④地域の特殊性を考慮した指導を取り入れている。
⑤子供たちの知的好奇心を育てる指導を取り入れている。
もちろん、この2つの塾をひとくくりにして評価するのは無理があります。ただ、2つの塾の方向性こそ、これからの北海道の塾に必要な要素であることには間違いはないでしょう。
別項でふれている北海道版の「夜スペシャル」。もし、委ねられるとしたら、この2つの塾以外に北海道の塾には適任塾は存在しないでしょう……。
※次回から2回に分けてそれぞれの塾をご紹介いたします。
北海道>札幌市>学習塾>現役予備校TANJI(旧称:丹治進学教室)
▲創業:1953年 ▲代表:丹治典久(北海道私塾連合会 会長)
▲教室所在地:札幌市豊平区月寒中央通4丁目4-13 TEL 011-855-6111
▲指導学年:小2~高3 (私立中高一貫校クラスも設置)
▲沿革
●1953年 中学生の受験指導を主とする塾として創設。
●1982年 高校生クラス指導の開始。
●1995年~ 私立中学コースの開設、名称変更。
▲月額授業料
○小2~5: 5,000円(英語) 10,000円(国算) 14,000円(国算英)
○小 6: 5,000円(英語) 15,000円(国算社理) 17,000円(5科)
○中1~2:19,000円(5科) ○中3:20,000円(5科) ○私立中コース:15,000円(英数)
○高等部 英語単科(週1回)12,000円 数学単科(週2回)20,000円
英数2科(週3回)26,000円
※教材費等は、学年・選択教科ごとに異なります。詳細はTANJIのホームページでお調べください。
※「現役予備校TANJI」のHPです。
◎指導方針
(1)小中高の持ち上がり一貫指導
公立学校の補完として存在する他塾と一線を画し、最大8カ年の継続指導ができる学習システムを構築している。また、他塾では一切対応していない中高一貫校クラスを開講し「体系数学」「プログレス」をもとにしたクラス指導を構築している。
(2)学習指導要領にとらわれない英才指導
生徒個々の可能性を最大限に伸ばすことを目的として、小中高の垣根のない指導カリキュラムを構築している。具体例として、
②小学国語の作文指導を導入し、真の国語力を身につけるための授業をする。
③中学部の指導時間は、HZ会・R会などの1.5倍!特に、英数理の3教科を同等にとらえて、週各2時間を割り当てている。(授業料は、前述2大手塾と同等か割安)
④知的好奇心を育む開架図書室の設置(右の写真:丹治代表の許可を頂いて掲載させてもらいました。)
◎お話をお伺いして
電話での第一声から、丹治代表の信念をお伺いすることができました。私の「何故高等部を始めたのですか?」という問いに対して、
“中学生で指導した生徒たちが、継続して通い続けたいと言ってくれたからです。生徒指導は、一定の期間を持って終了するものではないですから。”
痺れました。未だに、まともな高等部を作れない道内大手塾に見習ってほしいものです。
ところで、TANJIのHPの合格実績に「立命館慶祥高校」が掲載されていないのは、皆さんご存知でしたか?当HPでも、第3章で話題にした内容ですから、聞いてみました。
“各教科の指導カリキュラムが、進学校としての体をなしていないのです。これでは才能のある子たちの芽を摘むだけですから。私どもは、立命館大学志望の生徒以外は進路指導は致しません。もちろん、その旨は高校側にも伝えてあります。”
私が疑念としていたことの裏付けが、とれたような気がしました。ちなみに、「夜スペ」に関しては、
“興味はあります。しかし、私どもは「講師が命」であるとの固い信念に基づき、一教場主義を貫いているため、そこへの余力は残念ながらないと思います。”
というご返答でした。よい指導を継続するには、幅広く手は延ばせない。確かに真理でしょうね。とすると、万が一北海道版「夜スペ」を実施するとすると、やはり道内大手塾になるのでしょうか?! ちょっとさびしい気がします。
戦国武将に例えるなら、丹治代表は伊達正宗でしょうか? 父の築いた地盤を発展させ、大きな流れに屈せずに自国を発展・継続させた姿がだぶって見えます。
正宗も片倉小十郎・伊達成実というすぐれた側近の意見を聞いて、和をもって仙台藩の基礎を築いたわけですから、「TANJI」も仙台藩のように末長く継続して、北海道塾業界のご意見番として頑張ってほしい塾です。
最後に、3月5日という公立高校入試の対応でお忙しい日というのに、快く取材に応じていただきました。丹治代表ありがとうございます。
------------------------------------------------------------------------------------------------
〇『塾・予備校ブログ』を応援よろしくお願いします!
北海道>北見市>学習塾>志学会
▲創業:1992年 ▲代表:田巻一総
▲教室所在地:北見市大通り西2丁目 西銀ビル2F・3F TEL 0157-22-6666
▲指導学年:小4~高3 (四谷大塚NET & 東進衛星予備校北見地区代表塾)
▲沿革
●1992年 中学生を中心に指導する塾として開校。
●1995年 東進衛星予備校へ加盟。高校生の指導の開始。
●1998年 高校生のクラス指導部門の創設。
●2007年 四谷大塚NETへ加盟。
▲中学生授業料:中1・2…19,950円 中3…21,000円
▲中学生指導時間:週6時間(英数各2時間、理科1時間、国社1時間)
※志学会のHPは建設企画中です。
◎指導方針
(1)できるまで、わかるまで
授業時間の枠にとらわれず、理解するまで徹底して個々の生徒へ指導を行う。そして、わかったことを繰り返し確認して、定着させる。
(2)地域社会への貢献が目標
私教育を通じて、北見の街に貢献していくことを目指している。なお、この詳細内容は『志学会宣言』として、全教室に掲示されている。
なお、田巻塾長ご自身はご謙遜なさっていたが、北見北斗高校の北大進学者増に、多大な貢献をしたのは間違いないと思う。
(3)生徒たちの能力開発・思考力養成の実現
「TANJI」でも知的好奇心の育成は、指導方針であったが、「志学会」でもそれは同様。ただ、点数の取り方のみを指導する大手塾と異なり、生徒の興味を引き出しながら、さまざまな事象を発展的にとらえる心を育んでいる。
◎お話をお伺いして
実は、大変失礼な電話をしてしまいました。単にHPの存在を軽い気持ちで事務の方に確認しようとしたのに、とても丁寧な応対で私の不躾な問いに答えていただきました。
田巻塾長の話し方は、大変謙虚で優しさに満ち溢れていました。前述の北見北斗高の件にしても、
“いやいや、北斗さんがしっかりとした指導をしてくれているおかげで、うちの力ではないですよ。”
と、やんわりと語ってくれました。ただ、指導時間の件(北見R会と同じでは?と言っちゃいました!)を指摘すると、
“私どもは、すべてが専任講師です。生徒一人一人を細かく指導しています。時間割に関しても、英語・数学を集中的に指導するのではなく、家庭学習のしやすいカリキュラムにしています。”
と、謙虚な語り口の中に、揺るぎない自信を感じさせてくれました。
この言葉を聞いた時、「人は城、人は石垣、人は堀……」のフレーズが、私の脳内キーボードを叩いていました。田巻塾長のイメージは、やっぱり武田信玄ですね。立派な城を多数築くことではなく、信頼できる家臣を大切にする人なりを感じます。
そういえば、「志学会」には元の職場で部下だった人々が塾長を慕って集っているといいます。「志学会」が地域の信頼を得ている理由を垣間見たような気がしますね。田巻塾長、親切かつ丁寧な応対ありがとうございました。
ちなみに、田巻塾長の元の職場は、近所に立派な自社ビルを建設しました。立派な城を作っても、結局天下を維持できなかった織田信長や豊臣秀吉の先例を学んでないのでしょうか?
------------------------------------------------------------------------------------------------
〇『塾・予備校ブログ』を応援よろしくお願いします!